一度慰謝料をもらっても、離婚する場合にまた慰謝料請求ができる?

離婚であなたを守り切る。横浜プロキオン法律事務所
もう一度慰謝料請求?
あなたの配偶者(夫または妻)が不倫をした場合、あなたにはその配偶者と不倫相手に対して、慰謝料を請求することができます。
その場合の慰謝料相場は150万円から300万円といったところでしょうか。もちろん、不倫の程度によってはそれを下回ることもありますし、500万円近くになることもまま見られます。

1 慰謝料請求って、何が根拠??

さて、例えば、妻の不倫が分かって、あなたは別居に踏み切ったとします。
その場合、妻に対する慰謝料請求と、その不倫相手に対する慰謝料請求をすることが考えられます。
ところで、その妻と、不倫相手はなぜあなたに慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。
つまり、配偶者とその不倫相手に対して慰謝料請求できる根拠は何かということです。

一般に、最高裁判所は、不倫が違法である理由、つまりそれによって慰謝料請求ができる理由としては、不倫が「結婚生活を維持する権利」を侵害することを挙げています。
そして、この「結婚生活を維持する権利」を、一方の配偶者とその不倫相手が「共同して」侵害したことから、双方が責任を負い、慰謝料を払わなければならないとされるのです。

もっとも、不倫相手も責任を負うということについては、必ずしも当然のことではありません。
アメリカでは、不倫は、結婚当事者間の一方(夫か妻)の配偶者に対する責任であって、不倫相手が責任を持つということはほとんどありません。ノースカロライナ州やイリノイ州、ミシシッピ州などのわずか6州が、不倫相手への請求の余地を認めていますが、それが認められる場合も非常にハードルが高いものとなっています。(詳しくは、“What’s “Alienation of Affection?”(英文)
東京地方裁判所も、平成15年6月24日の判決において、貞操義務は一方配偶者が他方配偶者が「婚姻契約」により負う義務であって、婚姻契約の当事者ではない不倫相手に対して責任を追及することは、「些か筋違いと言うべき」と一刀両断しています。
しかしながら、現在の裁判所の主な運用としてはまだまだ不倫相手の責任を認めるものであって、当分の間はこの傾向が続くでしょう。

2 一度慰謝料をもらっても、離婚をする場合にまた慰謝料請求ができる?

さて、以上の理由で、あなたは自らの結婚生活を維持する権利が侵害されたことをもって、配偶者やその不倫相手に対して慰謝料請求ができるわけです。
それでは、一度不倫に関して請求をして、慰謝料を配偶者かその不倫相手から受領したあとに、実際に離婚をするに至ったとします。その場合、配偶者に対して、「離婚に至ったこと自体の慰謝料」をさらに請求することはできるのでしょうか。

実は、これもまた認められる余地があります。というのは、「不倫」によって配偶者があなたに対して負う責任と、「離婚」によって配偶者があなたに対して負う責任は、本来別物だからです。
つまり、不倫自体の責任と、離婚自体の責任は異なるということですね。

しかし、不倫自体の責任に基づいて慰謝料をすでに受領している場合、離婚自体についての慰謝料額は、二束三文程度のものとなってしまうということは十分ありえます。

というのは、不倫によってすでに婚姻関係が破綻してしまった場合、その時にもらった慰謝料は、婚姻関係が破綻してしまったことも含めての金額になっていることが多いからです。そして、離婚自体による苦痛というのは、婚姻関係が破綻してしまったことの苦痛とほぼ同じものであるはずです。
そうすると、離婚自体による苦痛は、すでにもらった慰謝料で解決されてしまったものと考えられてしまい、「離婚に至ったこと自体の慰謝料」としては、金額的にはほとんど発生しないものとなってしまう可能性が高いのです。

もちろん、不倫によっても夫婦関係が破綻するには至らなかた場合や、夫婦関係の破綻を埋め合わせる意味での慰謝料をもらったわけではない場合は、離婚に至ったこと自体の慰謝料もそれなりの金額になりうるでしょう。

昨今、不倫があった場合でも、すぐに離婚というわけではなく、別居した配偶者やその不倫相手から慰謝料をもらい、その後何年かして配偶者に対して改めて慰謝料を請求するということも多くあります。
そうした場合、前にもらった慰謝料がどういう意味を持つものであったのか、これが大事な点になってくるでしょう。

《弁護士のひとこと》

平成19年4月17日の広島高等裁判所の判決も、不倫自体に基づく慰謝料請求と、離婚自体に基づく慰謝料請求は別個のものであるとして、前者がすでに行われていても、後者の請求が可能であることを明示しました。
しかしながら、この事件では、すでに不倫自体に基づく慰謝料請求をした際、結婚生活が破綻してしまっており、それを前提として慰謝料金額が決まっていました。そのため、離婚自体に基づく慰謝料は、「ゼロ」であると判断されました。
これは、結婚生活の破綻という夫婦関係の終焉と、戸籍上の離婚というのは、精神的なダメージとしては同じものであるという考えがあるからでしょう。
もらった慰謝料が、何に対する補償であるのか。これは意外に重要な観点といえるわけですね。

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弁護士 青木 亮祐(あおき りょうすけ)

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