意外に知られていない?親権と監護権って何が違うの?

<2020/2/28更新>

 

離婚の話し合いで、子供の親権者、監護権者をどちらにするのか、もめがちなポイントですよね。
 

夫か、妻か、どちらが親権、監護権を持つかで大きく争いになることも、少なくありません。

 

そもそも、親権と監護権とは何が違うの?と疑問に思う方も多いでしょう。

 

場合によっては、親権と監護権を夫と妻で分けることもあると言うのだから、混乱していまいます。

 

そこで、本記事では、未成年の子供を持つ方に向けて、

「親権」「監護権」はそれぞれどういう意味なのか?一体どう違うのか?

どのような場合に「親権」と「監護権」を分けるべきなのか?

などについてご紹介します。

 

今後の離婚や親権に関する話し合いのために、本記事が参考になれば幸いです。

 

1.親権の内容には大きく分けて2種類ある

 

一口に親権と言っても、その内容は大きく分けて、財産管理権身上監護権(いわゆる監護権)の2つがあります。

 

(1) 財産管理権=子供のお金や財産を管理する権利

 

財産管理権とは、子供のお金や財産を管理する権利を指します。

民法824条では「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」と定められています。

 

すなわち、親権者は、子供名義の預貯金や資産(例えば、遺産分割や遺贈、贈与などで親族から多額の資産を譲り受けた場合など。)を管理する権限を持ちます。

 

親権者は、この財産管理権に基づいて、子供の資産を売却したり、賃貸することもできます。

 

ただし、子供が高額の資産を持っていない限り、親権者の財産管理権というのはあまり大きな関心ごとになりません。

 

たとえば、子供が、父方の祖父母から高額の不動産や預貯金を相続した場合などは、父親である夫が、妻に親権者として管理させたくないとして、親権のうちの財産管理権を強く望むケースなどはあります。

 

しかし、子供が、お年玉やお祝い金などの預貯金しか持っていない場合には、夫婦間で財産管理権をどちらにするかということで強く争うというケースは多くありません。

 

(2) (身上)監護権=子供の身の回りの世話をする権利

 

(身上)監護権とは、子どもと一緒に住んで、子どもに対してしつけをしたりなどと、子供の成長と発達を援助して、育成する権利(監護教育権)を中心とします。

 

民法820条では、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と定められています。

 

子供が養子縁組したり、18歳未満で結婚したりする場合の代理や同意の権限も含まれます。

 

なお、子供が職業を営むにあたってその職業の許可をする権利(職業許可権。民法823条)も含みます。

子供が高校生や大学生でアルバイトで働く場合など、親権者の同意が必要になります。

ただし、職業許可権についても親権者を巡る夫婦の争いの中で、大きなトピックになることはありません。

 

2 親権者と監護権者を分ける場合と、メリット・デメリットについて

(1) 監護権とは

 

以上の通り、親権とは、「財産管理権」と「身上監護権」の2つから構成されますが、監護権というのは、親権のうちの「身上監護権」のみ取り出したものになります。

 

ざっくり言うと、監護権者となった親とは、子どもと一緒に住む(同居する)権利があるとイメージしてもらえれば良いです。

 

親権を巡る夫婦の争いでは、双方が子供と離れたくないという気持ち、意向から大変な争いになります。

 

そのため、親権争いは、実質的に監護権を巡る争いと捉えていただいても、間違いではありません。

 

子供と親権に関する基本的な知識についてはこちらの記事をご参考にしてください。

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子供に関する基礎知識

 

(2) 親権者と監護権者を分ける場合について

 

親権者と監護権者を分ける場合には、自ずと

親権者=財産管理権(子どものお金や財産を管理する権利。)を持つ親

監護権者=身上監護権(子どもと一緒に住んで、子どもに対してしつけをしたり、子どもが職業を営むにあたってその職業を許可をする権利。)を持つ親

というように役割分担することとなります。

 

そのため、親権者と監護権者を分ける場合には、自ずと、親権者は、子供名義の財産管理をする権利と義務はありますが、子供と同居して身の回りの世話をすることはできないということになります。

 

(3) 親権者と監護権者を分けるメリット

 

親権について争いになっている場合、親権者と監護権者を双方の親で分けるメリットとしては、以下のものが挙げられます。

 

親権者、監護権者を分離することにより早期の話し合いでの解決が見込める。

親権について熾烈な争いになっている時に、落とし所として、監護権者をこれまでの主たる監護者とし、親権者を別の親にして、合意することがあります。

子供の親権は、様々な要素を考慮して決めますが、特に監護実績が重視されます。

そのため、これまでメインで育児を担っていた親(主たる監護者)が、訴訟の場合には非常に有利です。

しかし、別の親も強く親権を求めて争いになっている時、訴訟での解決にも時間がかかるので、親権者、監護権者を分けて(いわば、別の親の方の顔を立てて。)、早期に話し合いで解決するケースもあります。

その場合、監護権者からすれば早期の解決が見込めるというメリットがあり、他方で、親権者からすれば親権を持つことにより監護はできないまでも、親権者としての子供のとの繋がりを保てるというメリットがあります

 

監護権者に浪費癖などがある場合、子供の財産逸出を防げる。

これまでの主たる監護者に浪費癖(買い物依存症、ギャンブルなど。)があり、親権者として子供の財産を管理すると、子供の財産を食い物にしてしまうおそれがある場合。

そのような場合、監護権者から財産管理権を取り上げて、親権者が子供名義の財産管理をするようにできれば、親権者による子供名義の財産の逸出を防ぐことができます

特に、親権者側の親族からの相続や贈与などにより子供が高額の財産を持っている場合に、よく争いになります。

 

(4) 親権者と監護権者を分けるデメリット

 

では、逆に親権者と監護権者を分けるデメリットは以下の通りです。

 

親権者が同意しないと、預金口座の開設、パスポートの発行、私立学校との在学契約ができない。

親権者が財産管理権を持つため、親権を持たない監護権者のみでは、子供名義の預金口座を開設することができません。

また、監護権者が子供と海外旅行に行く際に、パスポートの発行は親権者のみ行い得るので、親権者が同意しないかぎり、パスポートの発行すらできません。

私立学校との在学契約に関しましても、親権者がその私学への進学に反対したら契約できません。

 

離婚後も(元)夫婦間で連絡を取る機会が増える。

以上のように親権者の同意がないと出来ないことが多いため、離婚後も(元)夫婦間で何かと連絡を取る必要が生じます。

離婚後も(元)夫婦間で子供のために協力できる関係が構築できていれば良いのですが、関係性が希薄な場合、離婚後も連絡をして諸々の同意書を作成したり、調整したりというのは結構大変です。

かえって(元)夫婦が対立した結果、子供の立場からすれば、預金口座を開設して自分の貯金をすることができない、パスポートを発行して海外旅行に行くことができない、自分の行きたい学校に行くことができないなどの不都合や不利益が生じることすらもあります。

 

(5) 親権者と監護権者の分離に関する家庭裁判所の実務について

 

以上の通り、親権者と監護権者を分けた場合、財産管理権に関するメリットはあるのですが、子供の立場からして不都合、不利益が生じる可能性が高いため、家庭裁判所の実務では、原則として親権者、監護権者を分離させません

 

もちろん、調停で双方が合意すれば、親権者と監護権者を分けることができます。

もっとも、家庭裁判所の調停委員は親権者、監護権者を分けたいという希望が出ると、嫌な顔をして「家裁では基本的に親権者と監護権者を分けませんから。」などとのコメントを言われることが多いです。

 

また、訴訟(裁判)でも特別な事情がない限り、原則として親権者と監護権者を分離させる判断することはありません。

 

そのため、監護権者と親権者を分ける場合には、離婚後も子供のできる限り不都合や不利益が生じないよう、(元)夫婦間で協力できる関係を構築するようにしましょう。

 

なお、子供の親権・監護権がどうしても欲しい男性の方は、こちらの記事をご参考にしてください。

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3 まとめ

・親権とは、大きく分けて財産管理権と身上監護権(子供の身の回りの世話をする権利)の2つがあります。監護権とは通常、身上監護権のこと。

・親権と監護権を分ける場合は、親権者は財産管理権のみを持つことになる。

・親権者と監護権者を分離したときは、親権者の同意が必要な事項が多いため、離婚後も(元)夫婦の協力関係が必要。そのため、子供の不都合、不利益が生じる可能性が高いので、家庭裁判所は分離に消極的!

 

弁護士のホンネ 

弁護士が代理人として対応する場合、親権者と監護権者は分離させないのが一般的です。

と言うのも、弁護士が代理人として対応すると言うのは、夫婦間の対立が激しく、ご本人様間で話し合いにより解決できない場合です。

そのような場合に、親権者と監護権者を分けて、離婚後は双方子供のために協力しましょうと言っても、なかなかご本人様の心情的に難しいことが多いからです。

そのため、主たる監護者側の代理人である場合には、相手方に対して親権者と監護権者を分ける実益はなく、親権・監護権ともに依頼者側にするべきと主張していきます。

他方で、主たる監護ではないお客様から、少なくとも親権は獲得したいと相談したときは悩みどころです。

その場合には、私からお客様に対して、親権を獲得するとかえって子供の不利益になってしまうことも多いから、親権を獲得して子供との法律上の繋がりを得るのではなく、面会交流の条件を拡張して面会を通じて子供との精神的な繋がりを重視しましょうとお話しすることが多いです。

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